NOW IS OUR TIME

Startup立ち上げの記録

僕をケースの主人公気分にさせたフリークアウトというスタートアップ

f:id:Norix:20140520130810p:plain

                   FreakOutのwebサイトより

 

フリークアウトのマザーズ上場が世間を賑わせているようなので、彼らがまだスタートアップだった頃のことを書こうと思う。

 

フリークアウトは当時DSPDemand Side Platform)をリリースする頃で、前職のエンジニアのTwitter上でやりとりがはじまり、本田さんと佐藤さんと六本木のつるとんたんで会食したのが最初の出会いだった気がする。

当時、僕のいた会社はモバイル専業広告代理店として、それなりのポジションを築いていた頃でモバイル業界の裏事情も含め情報は比較的入ってくる状況だった。しかし、PCが先行していたアドテクノロジーについては多くの知識を持ちあわせておらず、佐藤さんが話し始めると、僕と上司はひたすらに耳を傾け、佐藤さんと本田さんに質問をしまくることになったのを鮮明に覚えている。

  • ADEX、SSP、DMP、3pasなど新しいテクノロジー企業はどう広告費を分けあっているのか?
  • 毎秒捌く必要があるリクエストの数はどのくらいなのか?
  • 検索クエリターゲティング等、高度なターゲティングでどのくらい効果が改善するのか?
  • 性別など、ユーザーを特定する情報はどこから手に入れているのか?
  • 自作のサーバとそうでないのとコスト差はどのくらいでるのか?
  • 結局アメリカでは、どういうプレイヤーが勝ち抜くと予想しているのか?

  

この数名のスタートアップを出会ったことで、もう頭のなかに?が浮かんでは消え、不安とワクワク感が止まらなかった。

それだけRTB取引を実現するDSPというサービスは衝撃的で、フリークアウトはとても輝いてみえた。

 

広告にあまり詳しくない方のためにRTBとDSPを少し説明すると、

 RTB(Real Time Bidding)とは、オンライン広告の入札の仕組みで、広告のインプレッションが発生するたびに広告枠の競争入札を行い、配信する広告を決定する方式のことである。RTB取引は80ms(msは1000分の1秒)で行われる。誰かが広告枠に接触し、広告が表示されるまでのわずかな間に広告を表示する権利を広告主が入札している。

DSPDemand Side Platform)はこのRTB取引に対応し、広告主の希望通りに、入札を行うシステムである。たとえば、自社の化粧品を購入していない30代女性には広告を絶対出したいので高く入札し、20代はそれよりももう少し安く入札し、既存顧客と男性には訴求しないみたいなことを常に判断し実行してくれる。

 

DSPは、広告代理店が人力でやっていたメディアバイイングと広告の運用最適化を、人がどんなに頑張ってもできないレベルで実現する脅威的なサービスだった。リアルタイムで広告を入札するトレンドが米国ではきているらしいという海の向こうの話だったのを、急に現実として突きつけてくれたのがフリークアウトでした。

このスタートアップは、魅力的市場、異なる競争ルール、勝てる理由の三拍子が見事に揃っているように思った。

魅力的市場

  • リプレイスもとになるネットのディスプレイ広告費が明確に存在する。
  • 既存の取引形態からRTB取引に移っていくため、高い成長性が期待できる。

異なる競争ルール

  • RTB市場の競争ルールは、購入量や人的オペレーションを強みにしていたメディアレップや広告代理店にはプラスに働かない。
  • 広告主を抱えれば抱えるほど、入札が成功する確率が高く、1ビッドリクエストあたりの期待収益は高くなり、さらに多くのビッドリクエストを受け付けられるようになる。
  • 複数事業者が参入しようとしても、クライアントがDSP複数利用すると自社キャンペーン同士が入札競争を起こしてしまうため、1つのDSPを利用するようになりDSPは排他的な取引が行われる。

勝てる理由

  • RTBを深く理解している佐藤さんと高い技術的ハードルをクリアできる技術者(本田さん)を抱えている。二人がDSPを先行してリリースをして、早期にクライアント開拓が進めば十分勝てる ※当時の広告業界にいた人ならわかるだろうが、このRTB取引自体を正しく理解できいる人がまだ少なく、ビジネスサイドの人間は必死になってMicroAdの野口さんのブログを読んでいるような状況だったし、エンジニアもDSPを作れますと言い切れる人はほとんどいなかった。特に営業が幅を利かす広告業界に、わざわざ入社したいというエンジニアはいないという状態を作ってしまっており、同業者はみな頭を抱えていたと思う。

凄い会社が現れたもんだと衝撃を受けつつ、六本木からタクシーで帰りながら、自分の置かれている環境はまるでビジネススクールのケースだなと思った。

ケースのストーリーは、過去に急成長した企業が業績が安定させたところに、環境変化が起こりはじめ、じわりじわりと業績が下がり始める。主人公はこの状況を打開することを期待された新任CEOで、危機感のない組織に、頭を抱えて役員会に向かう、みたいなのがあるあるの内容だ。

 

残念ながら、僕は新任CEOを任せてもらえるほど出世していませんでしたが(笑)、ディスプレイ広告市場で、人的オペレーションを強みにして食っていた僕らは、RTB取引が浸透すると、強みを0から作っていかなくてならない上に、既存オペレーションを優先するため適応がなかなか進まないだろうというのが当時の所感だった。アドテクの複雑性からDSPを直接運用できる広告主は少ないだろうと思うものの、長期的に競争力をこそぎ落としていくプレイヤーの登場を前に、どうしていくべきかと頭を抱えていた。

 

今振り返ると、僕が前述したような分析には多少間違えがあり、頭を抱えるほど悲観的な未来は現実にならなかったが、フリークアウトの急成長は現実になった。


フリークアウトに会った日の直感はどこが間違えていたのか、自分の判断を見つめなおすと学びが多い気がするが、振り返っていると日がくれてしまうので、今日はここまで。

最後に本田さん、佐藤さん、フリークアウトの皆様、上場おめでとうございます! 

 

(余談)日曜日、ビジネススクールの卒業式でした。あまりの角帽の似合わなさにフェイスブックへの報告をためらっておりましたが、無事卒業しました(笑)フリークアウトはちょうど僕がビジネススクルールに通いはじめる頃に創業され、卒業する頃には上場しています。こんな短期間に成長する会社がほとんどないことは知っていますが、今年入学した生徒が卒業する頃にはしっかり結果を出していたいなと心に誓いました。

 

《告知:絶賛メンバー募集中》

 現在、10名程度のメンバーでわいわいとサービス開発して、ビジネス検証していますが、引き続き、僕と一緒に事業を作りたいメンバーを募集しています。スキルは問いませんので、ちょっと話聞きたいかもと思ったらFacebookなり、ツイッターから気軽にメッセージくださいませ。まずはスタバでお茶でもしましょう。

 

DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門 ビッグデータ時代に実現する「枠」から「人」への広告革命 (Next Publishing)

DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門 ビッグデータ時代に実現する「枠」から「人」への広告革命 (Next Publishing)